甲状腺

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甲状腺とは

 甲状腺とは人の喉仏にあり、大きさが3cm~5cm、重さが15g前後の内分泌器官(ホルモンを分泌する器官)です。体内組織の代謝に影響を及ぼしています。

 甲状腺で起こる疾患は次の通りです。

甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)

甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう) 甲状腺機能亢進症とは、バセドウ病、甲状腺クリーゼ、機能性腺腫、下垂体腺腫など、甲状腺内のホルモン分泌量が過度になる疾患です。
 甲状腺ホルモンが過剰になると、全身の代謝が亢進するので、食欲が出てよく食べているのにも関わらず体重が減り(高齢の場合は体重減少のみ)、暑がりになり、全身に汗をかくようになります。精神的には興奮して活発になる一方で、非常に疲れやすくなり、動悸(どうき)を一日中感じるようになります。
 手が震えて細かい作業が難しくなったり、字が書きにくくなったり、ひどくなると足や全身が震えるようになる他、無性にイライラして怒りっぽくなり、排便の回数が増えます。大きさに違いはありますが、ほとんどの症例でやわらかいびまん性の甲状腺腫(こうじょうせんしゅ)が認められます。

バセドウ病の治療

 バセドウ病の治療では、血液中の甲状腺ホルモンを低下させ、正常に戻していきます。甲状腺ホルモンを下げることにより、甲状腺機能亢進症状も軽減します。
 甲状腺ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬を、毎日決められた量内服していれば、徐々に甲状腺ホルモン産出量も下がってきます。甲状腺機能亢進症状は内服から約2週間後から徐々に良くなりはじめ、1~2カ月後にはかなり良くなっているケースがほとんどです。
 服薬期間中は、副作用に注意することが必要になってきます。特に重要な副作用としては、白血球が突然減って身体の抵抗力が弱り、40度程度の高熱や喉の痛みが出ることが稀にあります。放置していれば白血球は下がったままで大変危険な状態になりますので、38度以上の高熱が出た場合は必ず病院を受診してください。その他、蕁麻疹などの薬疹や肝障害が発生することもありますが、適切な処置をすることで改善します。
 甲状腺ホルモンの量が正常まで下がって症状が落ち着けば、運動制限も特になく、健康な時と同じような生活が過ごせますが、抗甲状腺薬の内服は引き続き行ないます。内服を中止したり、不規則な内服になると、ふたたび機能亢進症状を引き起こすことが多いです。
 甲状腺機能が安定すれば薬の量も減り、通院の間隔も2~3カ月に一度程度になりますが、抗甲状腺薬による治療は2年程度かかります。特に抗甲状腺薬を中止する時期は難しく、2年間内服しても抗甲状腺薬の中止ができない場合は、そのまま継続して内服していくか、あるいは別の治療法に変更することもあります。

バセドウ病眼症

バセドウ病眼症 バセドウ病になると、突眼症などの目の症状が出ることがあり、突眼症、内分泌性眼症、甲状腺眼症、甲状腺関連性眼症などと呼ばれています。目の異常はバセドウ病の患者さま全員に出るわけではなく、まぶたの異常も含めると眼症は全体の30%くらいになるといわれています。臨床的に明らかな突眼は約10%程度です。
 この病気はバセドウ病と同じく、自己免疫の異常が原因と考えられています。まぶたや眼球の後ろの組織に炎症が起こり、その部分がむくんで腫れるために、さまざまな症状が現れます。眼球の突出は、眼球の後ろの脂肪が腫れてボリュームが増えるために、眼球が前へ押し出された結果として生じます。また、眼球の後ろにある目を動かす筋肉が腫れることで、目の動きが悪くなり、物が二重に見えるようになります。さらに腫れあがった筋肉によって視神経が圧迫されると視力障害が起こります。
 バセドウ病眼症は、まぶたの腫れ、結膜の充血、まぶたがつりあがる、眼球突出、目の痛み、物が二重に見える、目がコロコロする、まぶしい、視力低下、物がゆがんで見える、視野全体に色が付いて見える、などの症状がみられます。中でも、視力低下、ゆがんで見える、色が変わって見えるといった症状は、視神経が圧迫されることによって起こる症状ですので、早急に眼科での治療を行なう必要があります。

バセドウ病と骨粗しょう症の関係

 人間の骨は、壊されてはまた作られるといったサイクルが繰り返され、絶えず新しいものに作り替えられています(骨代謝)。この働きにより骨塩量は常に一定に保たれ、丈夫な骨の維持に役立っています。
 甲状腺ホルモンは、この骨のターンオーバーに対して促進的に働くため、バセドウ病で甲状腺の機能が亢進した状態では、骨吸収と骨形成がともに促進されています。そして、甲状腺機能亢進症では、骨吸収のほうがやや強く働き、骨塩量が減少する傾向にあります。さらに、尿からのカルシウム排泄の増加や、血液中のビタミンDの活性の低下、腸管からのカルシウムの吸収も低下しており、骨塩量が低下することから骨粗しょう症になりやすい状態となっています。
 一般的には、バセドウ病の治療を行なえば、低下した骨塩量はもと通りに回復するのですが、閉経後の女性や高齢者であった場合は骨塩量の減少が強く、バセドウ病の治療だけでは骨塩量の回復が難しいケースがあります。
 骨塩量の低下や骨粗しょう症を予防するためには、十分な量のカルシウムの補給が勧められています。予防のためには、1日約800~1000mgのカルシウムの摂取が必要といわれていますが、統計調査では日本人の平均摂取量は1日580mg程度であり、やや不足傾向です。1日3食の規則正しいバランスの取れた食事と適度な運動をすることに加えて、カルシウムを多く含んだ食品(牛乳、ヨーグルト、チーズといった乳製品など)を積極的に摂ることが勧められています。高脂血症や肥満の方であれば、豆腐や納豆といった大豆製品、小魚類、緑黄色野菜などからカルシウムを補給すると良いでしょう。

バセドウ病と心臓の病気の関係

バセドウ病と心臓の病気の関係 バセドウ病になると甲状腺ホルモンが増えるため、動悸などをはじめとしたさまざまな心臓の症状が起こります。甲状腺ホルモンが過剰にある状態は、心臓に過度な負担をかけることとなり、放置していると心臓の病気まで引き起こしてしまいます。

心房細動

 心房細動は、不整脈の一種です。通常、脈は同じリズムで正確に打っていますが、この不整脈になるとそのリズムが狂ってしまいます。心房細動を放っておくと心臓の中に血栓ができやすくなり、それが流れてしまうと身体の様々な動脈につまってしまいます。
 脳血管がつまると脳梗塞を発症し、手足が動かせなくなったり、呂律が回らなくなったり、重症の場合は死亡するケースもあります。
 日本人では、バセドウ病の約2%の方に心房細動が起きており、年齢が高くなるほど確率が上がっていきます。甲状腺ホルモンの量が正常になると、心房細動にかかっている6割以上の方は自然に治ります。しかし、心房細動が続くと、正常な脈に戻すために薬や電気的徐細動が必要になることがあります。続いている間は血栓ができやすいので、それを防ぐ薬の服用をしなければならないケースもあります。
 心房細動は、起こってからの期間が短いほど治りやすくなります。バセドウ病の症状がある場合は定期的にチェックし、不整脈が出た場合は早急に受診するようにしましょう。

うっ血性心不全

 バセドウ病や心房細動を治療せずにそのままにしていると、心不全を引き起こします。心不全とは、心臓のポンプ機能が悪くなっている状態で、身体が必要とする十分な血液を身体に送り出せなくなります。また、心臓の動きが悪くなると身体の中に水分がたまりやすくなり、足のむくみがでたり、心臓や肺、お腹の中にまで体液がたまることもあります。心不全になると息苦しいため、身体を動かすことも大変になり、入院した上での治療が必要となります。特に高齢者の方は心臓の機能がやや低くなっていることもあり、心不全になりやすいといわれています。若い方でもバセドウ病を放っておくと、このような状態になる場合がありますのでご注意ください。

 甲状腺ホルモンが増えた状態が続くと心臓に負担がかかるため、他にも狭心症や心筋梗塞、弁膜症などを起こしやすくなり、中には突然死してしまうケースもあります。心臓病が起きると、甲状腺の治療に加えて心臓の治療まで行わなければなりませんが、早期発見、早期治療ができれば、病気の進行を防ぐことができます。

バセドウ病にまつわる精神症状

 バセドウ病にかかったことで、甲状腺ホルモンが高値になった場合に精神症状をともなうことがあります。甲状腺ホルモン値が正常になっても精神症状が続く場合は、バセドウ病に別の病気が合併している可能性が高いでしょう。

 甲状腺ホルモンが高値の場合、以下のような症状が出ることがあります。

1.感情の変化

 感情が不安定で神経過敏になり、無性に不安を感じたり、常にイライラしたり、リラックスできずに怒りやすくなります。また、音に過敏になったり、極度にびっくりしやすくなったり、理由なく涙が溢れてくることもあります。
 こうした抑うつ状態もみられる一方で、落ち着きがなくなったり、多弁になったり興奮しやすく、動き回ったりするなど、躁病のような症状がみられることもあります。ただ、日中に患者さまの活動性が低下するという点が躁病との違いです。

2.睡眠障害

 寝つきが悪くなり、途中で目覚めたり、頻繁に悪夢をみるようになります。

3.活動性の低下

 疲れやすくなり、頻繁に休息をとったり昼寝をしなければ一日持たないという状態になります。何かをしようとしても、まとまったことを最後までやり遂げることができなくなります。以前から行なっていた家事などをしていても、妙に不器用になり、よく物を落としたり、つまずいたり、転倒したり、ぶつかりやすくなったりします。

4.知的機能障害

 思考が遅くなり集中力の低下が現れます。さらに、複雑な問題の解決能力も低くなります。そのため、学校の成績が目立って落ちたり、物忘れをしやすくなったり、興味を持っていたことへの関心が薄れてきます。

 バセドウ病の患者さまに上記の精神症状が現れた時、家族などの周りの人々は、患者さまが以前よりも怒りっぽくなり、わがままになったかと思えば、引っ込み思案になり外出を嫌うようになったと感じ、違和感を覚えることが多いようです。
 甲状腺の腫れや突眼といったバセドウ病特有の症状がみられない場合には、ただ単に本人がわがままで怠けているだけだと思われたり、あるいは精神疾患と思われて、精神科の受診を勧められるケースも珍しくありません。
 また、無欲性甲状腺中毒症といわれるバセドウ病の一型では、無欲、嗜眠(一旦眠ると、刺激しないと目を覚まさないこと)、体重減少、抑うつなどの症状的特徴がみられます。この症状は従来は高齢者に多いといわれていましたが、若年者にもみられたという報告もあり、うつ病と間違えないように注意深く観察しなければなりません。

バセドウ病とストレス

バセドウ病とストレス バセドウ病の発病にストレスが関与するかどうかについては、これまでさまざまな研究や症例報告がされてきましたが、近年では発病前過去1年間のストレスの多い出来事が発症に関与しているという報告が数多く提出されています。
 バセドウ病に限らず、どんな病気にかかった時でもいえることですが、病気になったこと自体が患者さま本人にとって大きなショック、ストレスになります。当院では、患者さまやそのご家族の方との良好な信頼関係を築いていきながら、バセドウ病の治療だけでなく心理的側面にも配慮した診療を行なっていくことを目指しています。

バセドウ病と妊娠

バセドウ病と妊娠 バセドウ病の患者さまが妊娠した際には、抗甲状腺薬できっちりと甲状腺機能を正常化しておくことが大切です。妊娠期間中には甲状腺機能は安定化することが多いのですが、少なくとも2カ月に1回程度の甲状腺機能検査をすることが望ましいでしょう。
 しかし、未治療であったり、不完全な治療中の甲状腺機能亢進状態であれば、流産や早産を引き起こす確率が健常の妊婦さんよりもやや高くなります。診断がつき次第、治療を行ない、なるべく早めに甲状腺機能を正常化することが必要です。
また、甲状腺刺激物質のTSH受容体抗体(TRAb)は、胎盤を通じて胎児に移行します。こうなった場合、胎児の甲状腺をも刺激して胎児が機能亢進になってしまうことがありますが、妊婦さんがきちんと抗甲状腺薬を内服していれば、抗甲状腺薬も胎児に移行し、妊婦さん、胎児ともに治療される形になります。ただし、妊娠中のバセドウ病治療は、産婦人科医との密接な連携が重要になってきますので、妊娠中は必ず担当医から紹介状を持参した上で受診してください。
 出生後は、胎児に移行していた抗甲状腺薬の作用が切れると、TRAbの刺激作用が優位となり、生後4~5日経った頃から新生児が一時的な甲状腺機能亢進症を発症する場合もあります。ある程度発症を予測できることが多いので、その場合は小児科医との連携が必要です。
 バセドウ病の治療中で出産を予定している方は一度ご相談ください。

バセドウ病と授乳

バセドウ病と授乳 出産後から数カ月の間は、甲状腺機能は安定していますが、その後悪化するケースもあります。そうなった場合、抗甲状腺薬の内服または増量が必要になることがあります。抗甲状腺薬のPTU(チウラジール®、プロパジール®)は内服中でも、少なくとも一日300mgまで授乳ができます。またMMI(メルカゾール®)という抗甲状腺薬も、使用量と使い方によっては内服できますので、母乳育児をご希望の方は一度ご相談ください。

甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)

 甲状腺機能低下症とは、橋本病、クレチン症など、甲状腺内のホルモン分泌量が不十分になる疾患です。
 甲状腺ホルモンは、全身の代謝を維持するのに重要なホルモンなので、低下すると活動性が鈍くなります。一日中眠くなったり、全身の倦怠感(けんたいかん)を強く覚えるようになり、記憶力や計算力の低下がみられることもあります。また、体温が低くなり、皮膚が乾燥して、夏でも汗をかかなくなります。顔はむくみやすくなり、脱毛がひどくなりカツラが必要になるケースもあります。眉毛の外側3分の1が抜けることも多いです。声が低音化してかすれ声にもなりやすく、体重は増え、便秘になり、女性は無月経になることも珍しくありません。ほとんどの場合、甲状腺が腫れていますが、萎縮性(いしゅくせい)甲状腺炎という、甲状腺の腫れがない高度の甲状腺機能低下症になることもあります。
 甲状腺低下症で顔や手足がむくみやすくなるのは、ムコ多糖類(たとうるい)という物質が皮下にたまるからで、そのために指などで皮膚を押してもへこまない浮腫(ふしゅ)(むくみ)が起こります。アキレス腱をハンマーで叩いて反射をみると、もどる時の動きがゆっくりになります。

橋本病(慢性甲状腺炎)

 風土的にヨウ素欠乏がない日本においては、橋本病が甲状腺機能低下症の一番の原因となっています。しかし、橋本病のすべての患者さまが甲状腺機能低下症になるわけではなく、甲状腺機能に異常を認められない患者さまや、一時的に甲状腺機能の低下がみられても回復される患者さまも数多く存在しています。橋本病は若い世代から中高年の女性に多いのが特徴で、成人女性の約3~10%を占めるといわれています。

 橋本病の原因は、自己免疫の異常によりリンパ球が自己の甲状腺組織を破壊して、慢性炎症が生じることです。症状としては、甲状腺が大きくなります。甲状腺機能が正常の場合には具体的な症状がみられませんが、甲状腺ホルモンが不足してくると、顔や手足のむくみ、悪寒、体重増加など、甲状腺機能低下症の特有の症状が出てきます。
 甲状腺機能が正常の場合には治療の必要はありませんが、甲状腺機能低下があれば甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS®)の服用が必要となります。甲状腺機能低下は治る場合もありますので、一生内服が必要になるとは限りません。
 チラーヂンS®には副作用はほとんどなく、服用すると約1~2カ月で甲状腺ホルモン値が正常になり、自覚症状がなくなります。内服を続けることで、健康な方と全く変わらない生活を送ることができます。甲状腺ホルモン値が正常になっても何らかの症状がある場合は、甲状腺以外の病気の可能性があります。
 橋本病は難病ではなく、自己抗体価(抗Tg抗体、抗TPO抗体)が高くても、全身の臓器への影響はないので心配ありません。ただ、甲状腺機能が変化することがありますので、6カ月~1年に1度、定期検査を受けてください。
 また、無痛性甲状腺炎後、出産後(出産後甲状腺機能異常症)、インターフェロン治療後などは、甲状腺機能低下を示す場合があります。甲状腺機能低下症の症状を感じたら早急に検査を受けましょう。
 喫煙は甲状腺機能低下症のリスクを高めますので、禁煙をオススメします。自己免疫の異常で生じる病気のため、膠原病の一種と勘違いされることがありますが、橋本病は膠原病ではなく、膠原病の合併が多いわけでもありません(膠原病に橋本病が合併することは多いとされています)。
 予防のためには、海草類を多く摂り過ぎないようにしましょう。一般的な量を食べることは問題ありませんが、根昆布療法(根昆布をつけ込んだ水を毎日飲む民間療法)をしたり、イソジンのうがい薬で毎日うがいをするとヨウ素の摂り過ぎになり、甲状腺機能低下症になることがあります。ただ、摂取をやめると正常に回復します。
甲状腺が急に大きくなったり、甲状腺の痛みや発熱、動悸、異常に暑がるなど、日頃と異なる症状があればすぐにご来院ください。

甲状腺腫瘍(こうじょうせんしゅよう)

 甲状腺腫瘍とは、乳頭がん、濾胞(ろほう)がんなど、甲状腺が腫れあがったり、癌腫が生じている状態です。
 甲状腺の腫れ方には、バセドウ病や橋本病などのように甲状腺全体が腫れる「びまん性甲状腺腫」と、甲状腺が部分的にしこりのように腫れる「結節性甲状腺腫」があります。いずれも20歳代~50歳代の女性に多く、しこりがあるだけで、他の自覚症状はありません。
 甲状腺の腫瘍は、良性と悪性、さらに腫瘍によく似た「過形成」に分類されます。「過形成」は正常組織と同じように細胞が増殖したもので良性です。注意しなければならないのは、がんなどの悪性腫瘍です。したがって検査では、良性か悪性かを鑑別することが重要になってきます。
 腫瘍の種類は、良性腫瘍、悪性腫瘍、その他の腫瘍、分類不能腫瘍、腫瘍様病変の5つに分けられます。良性腫瘍は、濾胞腺腫(ろほうせんしゅ)、悪性腫瘍は、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、低分化がん、髄様(ずいよう)がん、未分化がん、悪性リンパ腫、そして腫瘍様病変には、腺腫様甲状腺腫、嚢胞(のうほう)などが含まれ、多くは良性です。
 甲状腺のしこりが、がんである頻度はとても低く、多くは良性です。甲状腺がんは、女性が男性よりも約3倍多く発見されています。他のがんに比べ進行が遅く、治りやすいものが多いのが大きな特徴です。

乳頭がん

 甲状腺がんの9割以上を占めるのが乳頭がんです。このがんは早い時期にはしこりがあるだけで、進行もゆっくりしています。乳頭がんが進行すると、息苦しくなる、声がかすれる、ものが飲み込みにくい、といった症状が出てきます。ただ、多くの場合は首のしこりに気づいた時点で、または健康診断における頚部超音波検査などで甲状腺のしこりを指摘されて病院の診察を受けるため、症状がここまで進行するパターンは多くありません。乳頭がんは、比較的早い時期から甲状腺周囲のリンパ節に転移することもあるため、首の側面にあるリンパ節が腫れて異常に気づく人もいます。しかしリンパ節に転移しても、そこでの成長もゆっくりとしているので、この時点で治療をして治ることが多いのが特徴です。

濾胞がん

 濾胞がんは甲状腺がんの5%ほどを占めています。乳頭がんと同様に、しこりがあるだけでほかには自覚症状がない場合がほとんどです。リンパ節への転移が少ないものの、肺や骨などに転移することがあります。ただ、進行が遅いため、早期に治療をすれば、治る確率はかなり高いです。

低分化がん

 乳頭がんや濾胞がんのなかで、組織学的に低分化成分が含まれるがんを低分化がんと呼びます。乳頭がんや濾胞がんに比べると進行が早いため、悪性度がやや高く、適切な治療が必要となります。

髄様がん

 乳頭がんや濾胞がんのように、甲状腺ホルモンを作り出す濾胞細胞からできるがんではなく、カルシトニンという血液中のカルシウムを下げるホルモンを作り出す傍濾胞細胞(C細胞)から発生するがんです。 髄様がんの中には家族性(遺伝性)に発生するケースがあり、遺伝性の髄様がんは遺伝子検査でがんが発生する遺伝子があるかどうかを診断できるようになっています。遺伝性髄様がんの中には、副腎の褐色細胞腫や副甲状腺機能亢進症といった他の内分泌腺の病気を合併するものがあり、多発性内分泌腺腫瘍症(MEN)と呼ばれています。

未分化がん

 未分化がんは非常に未熟な細胞であり、発育が急速で悪性度が高くなります。高齢者に多く、男女比は1対2で、甲状腺がんの約1~2%となっています。

甲状腺炎(こうじょうせんえん)

 甲状腺が炎症を起こして、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症が起こることがあります。
 症状としては、体重変動、抜け毛、動悸・息切れ、不整脈、吐き気、嘔吐、下痢、多飲多尿、発汗または発汗減少、高血糖、鬱、生理不順、頻脈(心拍数が増加している状態)、下肢のむくみなどが現れます。

 亜急性甲状腺炎は甲状腺の痛みや発熱を伴い、甲状腺に炎症が起こる病気です。男性より女性に発症しやすく、特に30~40歳代の女性に多く発症します。症状としては、のどをさわった時に痛みを感じる程度の軽いものから、何もしなくても耳や胸まで強い痛みを感じるケースもあります。また、甲状腺全体や左右片方のみが硬く腫れますが、腫れや痛みが左から右にうつるなど、時間とともに位置が移動していくことも多いです。さらには発熱することもあります。

 

その他の甲状腺疾患

低T3症候群

 重い病気や飢餓状態になった時、血液中のT3濃度だけが下がり、通常TSHとT4濃度が正常であるという検査結果が出るケースがあります。この時、T3濃度が下がっているために、甲状腺機能低下症と間違われてしまうことがあるので、注意が必要です。この状態はT4からT3への転換が減少することによって生じ、重い病気の時に身体のエネルギーを消耗しないための防御反応であると考えられています。
 従って甲状腺ホルモンの補充は必要ではなく、逆効果になるケースもあります。やせた若い女性で血液中のT3だけが低い場合は神経性食欲不振症が疑われます。その場合も甲状腺ホルモンの補充は必要ありません。

正中頚嚢胞(せいちゅうけいのうほう)

 顎下部から甲状腺上部(喉仏付近)の間の正中部(身体の中心線上)に、皮膚の下のしこりがみられます。これは甲状舌管という胎児期の遺残物が原因で、サイズが大きいものや炎症を繰り返すものは手術を行ないます。成人になってから見つかる例も多くあります。

出産後甲状腺機能異常症

出産後甲状腺機能異常症 この病気は、普段は甲状腺機能に異常のない患者さまが出産後に甲状腺機能異常を示すというもので、以下の5つに分けられます。

  • 出産後3~6カ月にバセドウ病を発症
  • 出産後2~4カ月に一過性の甲状腺中毒症
  • 出産後1~3カ月に破壊性甲状腺中毒症を示し、さらに一過性または永続性甲状腺機能低下症を発症
  • 出産後1~2カ月に破壊性甲状腺中毒症を認めずに、一過性甲状腺機能低下症を示すもの
  • 出産後に永続性甲状腺機能低下症を発症

 多くの場合は、出産後甲状腺炎(一過性甲状腺中毒症、一過性甲状腺機能低下症)ですが、中には出産後バセドウ病となる方もいます。これらは一般妊婦の約5%に起こるといわれています。慢性甲状腺炎と診断されたことがある、あるいはバセドウ病の治療歴がある若い女性は、出産から3カ月後に甲状腺機能検査を受けることをオススメします。

当院では甲状腺の疾患症状がある方に

1.定期的な血液検査・超音波(エコー)検査

2.細胞診

 甲状腺に腫れ物などができた場合に、良性なのか悪性(がん)なのかを、判断するための検査です。腫れ物から採取した細胞を観察し、細胞の形や性質を基に良性、悪性の判断を行います。

3.細胞診

 検査の結果、手術が必要な場合は提携医院にご紹介いたします

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